ビッグ3は、そろそろ最後のSOSを出すしか手がないまで追い込まれているはずですが、日本のメーカーもいよいよ厳しい。一説には、今年は台数ベースで6割まで落ち込むとのこと。台数ベースでこれですから、売上は半減すると見るべきでしょう。
それは、落ち込んだ今の販売台数こそ自然に売れる台数と考えることで理解できます。つまり今までが売れすぎていたのであって、やっといま正常に戻ったってことです。
そうすると、なぜいままで売れすぎていたのか、これから景気が回復した時昔のようにはなぜ売れないのか。
(ビッグ3を救うべきか、見捨てるべきか(3))
台数ベースで考えると今回の事態は、極めてクリアです。車を必需品とする限り台数ベースで、多少減ることはあっても、これだけの減少を説明することはできません。
つまり車がなぜ売れていたのか、そもそも車の付加価値とは。
人が車を買う理由は、千差万別。しかし、車の付加価値に、この消費者側の多様性は無関係です。すなわち、「移動」と「所有」、ただこれだけです。「移動」については後述することにして、この「所有」。
「所有」するだけの価値のある車は、売れる。
とすれば今回の経済危機が原因で、価値のある車自体が減ったわけではありません。単に「所有」するだけの財力がなくなっただけと考えるのが、真っ当な考え方です。しかしこれだけの販売台数の落ち込みに見合う人々の財力が、世界中で一斉に劣化したとは、到底考えるわけにはいきません。要するに、落ち込みの原因としての「所有」は、極限られた要因といえるわけです。
たいする「移動」にこそ、今回の問題を読み解くなぞが隠されているのです。
そもそも「移動」とは何か。
実は「移動」には、二つの価値が隠されているのです。その一つが、他の移動手段に代替可能な「移動」です。これは電車バスやカーシェアリングの世界であり、車を必需品と考える人からすると、もとより車に対する付加価値を感じない人々です。彼らが原因で販売台数の減少は、有り得ません。残るもう一つの「移動」こそ、今回の大きな落ち込みの原因であります。それは「移動」のための「空間」の存在です。単なる移動としての車ではなく、リアルなスペースとしての車です。
人は、コミュニケーションのための場を、求め続けてきたのです。「移動」するコミュニケーションの場である「空間」としての車。これが「過大」に車が売れていたわけであります。ご想像通り、すなわちこれは見事にインターネット「空間」に置き換わりました。もはや車の「移動」すなわち「空間」は、デジタルによって充足される時代となったのです。
これにビッグスリーはおろかトヨタは気付いていません。
人はなんのために車で「移動」するのか。この原点にかえって考えてみれば、いまなすべきことはおのずと明白に見えるはずです。 KAI
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