CNETに掲載されたレポートに拠れば、クラウドコンピューティング基盤提供企業が得る利益は僅かであると言う。
クラウドコンピューティングがITの世界を支配することはないだろうが、ソフトウェアベンダーは大騒ぎすることになるだろう。GoogleとAmazonはクラウドコンピューティングの勝者になるだろうが、得られるものは比較的わずかである。また、コンシューマーと企業顧客の両方に向けて、クラウドデベロッパースタックを提供するという競争がある。
(グーグルやアマゾンがクラウドから得るメリット--アナリスト分析に見る利益性)
この結論は、一面だけを見れば間違ってはいないけれど、まったく的外れな結論となっています。それはクラウド「基盤」事業の目的を勘違いしているからですが、検索事業において「検索」そのものが有償でないのと同じように、「基盤」そのものから収益をあげることは目的でもなんでもないと言うことです。
すなわちそれは、「基盤」とはあくまでクラウドコンピューティング社会のインフラ事業であり、その収益は、インフラ上に構築される「アプリケーション」そのもの、あるいはアプリケーションにより実現される「サービス」そのもの、これらいずれかによってもたらされるものと考えているからです。
そしてこの「アプリケーション」が、「ツール」ではなく「システム」であることに注意する必要があります。収益を上げられるのは「アプリケーションシステム」と言うことです。逆に、「ツール」はネット上では無料が当たり前。「ツール」そのもので収益を上げることはできないのです。
これを、このレポートは理解していません。
確かにSaaSは、人事管理や顧客関係管理(CRM)ソフトウェアで採用が進んでいるが、ドキュメント管理をオンライン化している企業は全体の10%にすぎない。大半の企業は「Microsoft Office Word」や「Microsoft Office Excel」の方を好むとLindsay氏は指摘している。そうした状況は変わるだろうか。少しは変わるだろう。Lindsay氏は「Microsoft Office」は今後も市場での優勢を維持すると予測している。Officeが今後も支配的な地位を保つとする理由が興味深い。Lindsay氏は次のように述べている。
この理由がオフからオンへの変換精度と言うのも、まったくの的外れな指摘です。
「ツール」であるオフィス製品にクラウド化される必然性は、上記通りにもとより残念ながらありません。たまたま、「ツール」をポータルにして広告モデルで稼ぐことに成功する企業、すなわちエクセル、ワードの画面を開くたびに広告が出てくることで成り立つビジネスが、今後出てきてうまく行く可能性は、もちろんあります。
しかしそれは、クラウドの「アプリケーション」としてではなく、クラウド上で実現する「サービス」による収益で成立する、広告モデルビジネスに他なりません。そしてもしこのビジネスが成功した暁には、マイクロソフトのオフィス事業部は間違いなく消滅します。
かように、クラウドコンピューティングの威力は、遥かに強大です。
世の中のありとあらゆるサービスが、クラウドの中の「アプリケーション」でカバーされる時代が来るのは、間違いありません。これに、「アプリケーション」としてかかわるのか、「サービス」としてかかわるのか、企業の命運がこれにかかっていることに気づいた経営者だけが、生き残ることができるのです。 KAI
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