未曾有の経済危機である。
株価が下げ止まらない。理由は、前回書いたとおり。
識者は、欧米の指導者に、日本の経験に学べと言う。これはこれで正しいけれど、では日本の経験とはなんだったのか。これを正しく理解している識者は、ほとんどいない。
2003年5月17日、りそな銀行が国有化された。
この時、榊原英資は、この国有化を指揮する竹中平蔵を、ペーパードライバーと酷評し運転する資格すらないとこき下ろしたが、結果はこれを境に株価が反転し、日本経済復活へ大きく面舵をきることに成功したのでした。
以来、榊原がこれに始末をつけた様子は見受けられません。所詮この程度の男にすぎないと言うことですが、他の識者といわれる方々も、目くそ鼻くそです。
当時も今も彼らが理解できていないのは、竹中平蔵がよく使う「メッセージ」と言う概念です。
国有化当時の「空気」を一言で言えば、「銀行憎し」です。いつになっても反省しない銀行経営者。相変わらずの高給取りの銀行員。世間の「空気」はきわめて重苦しく、閉塞感に覆われていました。識者といわれる人々は、この「空気」が読めない。榊原を始めとしたこのKYな奴が的外れなことを言うから、余計「気分」が悪くなる。
この状況の中の国有化とは、いかなる「メッセージ」であったのか。
それは、銀行経営者に責任を取らせること、この一点であったのです。
そしてこの「メッセージ」は、一般的に理解されているような市場に向けたものではありません。それは、世間の人々、一人一人の「気分」に向けた「メッセージ」だったのです。世間の人々は、これで一気に気が晴れます。昨日までの重苦しい空気から、一挙に開放されたのです。
これに最後まで抵抗して逮捕された旧UFJ幹部も、滑稽で哀れでしたが、凡そ他の銀行の幹部も似たり寄ったりの中、見せしめに大いに一役かった功績は認められるべきかも。
では、今発すべき「メッセージ」とは。
やはり、当時の日本同様、マネーゲームに踊った経営者に責任を取らせること、これ以外にはありません。その意味でリーマンを破綻させたことは正解でしたが、AIG救済はいかにも甘かった。AIGを国有化し、経営者を変えるだけで、すべてが解決したのです。AIGを解体する必要などさらさらないのです。
70兆円投入も同じ。不良債権の買取は二の次。どしどし国有化し、経営者を首にする。これですべて解決するのです。
なぜか。
今、不況の風が吹き始めました。雇用の不安。自動車が売れない。しかし、みなお金を持っていないわけではありません。もちろん今までの低所得者は相変わらず低所得であることに変わりはありませんが、現金はもちろん金融資産を持っている人たちは、それが紙切れにならない限り、もしこのまま経済が回復するならば、なんの影響も、なんの心配もないのです。
つまり、企業を倒産させることなく(これが大事)、経営者の責任を片っ端から取らせていくだけで、世の中の「空気」を一変させることができるのです。もちろん、市場から退場させる必要のある企業を救う必要はありません。しかし、そのことと経営者に責任を取らせることとは、まったく別問題です。
まっとうな企業を倒産させないことで、雇用を守ることができます。今も明日も雇用の心配が無くなればお金の心配もなくなります。消費を減退させている世間の「気分」は、すべてここにあります。
経営者憎しと雇用の不安、この世間の人々の、一人一人の「気分」に直接届く「メッセージ」こそ、唯一世界を救うことができると、KAIは考えます。 KAI
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