今週の火曜日は新聞休刊日につき、前日の建国記念日の掲載。
東京オリンピック開催を目前に控えた1964年(昭和39年)の7月、「熱海会談」は行われます。参加した代理店170社の大半が赤字経営に陥る中で、幸之助は販売店の社長たちと激しく議論を闘わします。
ここで代理店の社長たちの心をつかんだ幸之助は、営業本部長代行となって再び直接営業の指揮を執り始めます。そして新たに導入した「新販売制度」が功を奏し、相始まった「いざなぎ景気」にも助けられ、熱海会談から3年後には、すべての販売会社が赤字から抜け出したのでした。先ほどまで怒号と罵声が飛び交っていた会場はしんと静まり返り、やがてそこかしこから低い嗚咽の声が聞こえはじめた。彼の真心が、湖面に立ったさざなみのように静かに出席者の心へと伝わり、あれほど激しく対立していた気持ちが一つになった。
不思議なことに代理店側も、今となってはその静謐(せいひつ)な心癒される場所に連れていってくれた松下幸之助という稀有な経営者に、ただ感謝の心だけが残っていた。
(産経新聞、同行二人(どうぎょうににん)第23回、北康利、2008/2/11、p.19)
こうした危機を乗り越えるたびに、代理店・販売店をすべて含んだ松下ファミリーとも呼ぶべき松下全体の結束が、より強固なものになっていくのでした。
会社組織にとって、その発足直後から組織を揺るがす危機が、幾度となく訪れるものです。組織と言うものは、この危機を乗り越えることによって、より強靱な組織へと鍛え上げられていきます。逆に言えば、より強い組織は、この危機との格闘でしか創りあげることができないと言えます。
そして組織とは、人です。
人、一人一人がこの組織の危機に直面して、状況を把握し、決断し、行動する。この中で一人一人が鍛えられ、より強靱な精神力と、より普遍的な営業力、技術力を身につけていくことができるのです。
ともすれば誰も歩いたことのない道を歩む時は、誰しも挫けそうになります。組織は、それを助けます。一人では諦めてしまうことも、組織と言うチームワークの力が、挫けかけた一人一人に、大きな力を与えます。
今、このチームワークの力に勇気を得て、KAIもまた一歩歩み始めます。 KAI
コメント