偽装の真相

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昨年はあらゆる偽装に明け暮れた一年でした。

なぜ偽装が起こるのかを問う前に、実は偽装は今に始まったことではなく、古の時代からの日常茶飯事であったことを指摘する識者がいないのは、不思議な話です。

偽装問題の本質は、記号と実体の乖離問題です。今の時代に至る古の大昔から記号のリアリティを保証してきたものは、記号に対する実体の存在ではなく、その記号を解釈する権威たる人の存在以外何者でもありませんでした。いわゆる専門家であり、実体である例えば冷泉家文書にアクセスできる権限を持つ人間の存在そのものであったわけです。

この構造を破壊したのが、インターネットであることは間違いありません。

つまり今までは、権威のある専門家であったり大手デパートであったり、記号と実体の関係を保証する人間あるいは機関の存在が、記号のリアリティのすべてであったのです。

この世界では、偽装と言う概念が存在しないのは自明です。

これに風穴を開けたのが、インターネットでありコンピュータによる分析技術です。この中でも今一番大きな力を与えているのがDNA鑑定です。食品関係の偽装のウソを、このDNA鑑定は次々と暴いていきます。

これがなければコシヒカリとちょっと違うんじゃないと思っても精米業者を追及するすべを、こちら側が持ち合わせていないことをいいことに、実は今まであらゆる分野のあらゆる商品において、業者のやりたい放題がまかり通ってきたのは、間違いない事実であります。

ところがこれがここ数年で大きく変わってきました。

昨年か一昨年逮捕された大阪の女社長の、精米卸業者の卸先である小売店には、消費者からの苦情が山ほど届いていました。今までであればこれ以上何も変わらなかったものが、インターネットで話題になり、これをメディアが取り上げ、最後は女社長は逮捕されますが、しかし彼女は逮捕直前まで「偽装」を通し続けるといきまいていたのです。

これが吉兆の例を見るまでもなく、現場の責任者の常識であるわけです。

結論を言えば、やっと古の昔から行われてきたあらゆる現場での偽装と言うエートスの欠落に指弾の矢が向けられたのが、昨年の一連の偽装問題の真相です。

しかし、この問題の解決は、実はきわめて簡単なのであります。つまり、松下幸之助の言葉にもありますが、「商い」とは何であるかほんの少しでも考えれば、一体どうして消費者を裏切ることができるのでしょうか。エートス以前の問題であります。

とは言え、ことの本質が現代と言う時代の価値観、すなわち、ばれなければ(これ自体は破綻した)自分さえよければ良いと言う価値観に支配された人々が、ゾンビのように拡大再生産される社会には、ほとんど絶望的でさえあります。

ウソはいつでもつける。しかしウソはいつでもバレル。

これをあらゆる階層のあらゆる職業の人々に浸透させることが、この問題を解決するキーポイントであります。 KAI