組織の進化のレベルが働き方を決める(3)

  • 投稿日:
  • by

こんなすばらしい製品でありサービスなのに、なぜ企業の購買担当者は、これを買い叩くのか不思議でしょうがなかった。

 若いころ、私は小さな商社で仕入れ業務を担当していた。当時、会社は大口顧客の倒産で危機にひんしており、外部から新社長が招かれた。
 その新社長のヒアリングを受けた際、「業務遂行上、常に心得なければならないことは何か」と問われ、「1円でも安く仕入れ、業績向上に貢献することです」と答えると、「50点以下だ。100点の答えを考えろ」と宿題を与えられた。
 後日、社長から答えを教わると、「商品の価値通りの価格で仕入れること。100円の価値の商品は100円で。90円でも110円でも駄目だ。価値(価格)は相場によって日々変動するので価格情報の収集を怠るな」とのことだった。
(中略)
 今から数十年前、商道徳という企業倫理があることを教えられた。そして、新社長のもとで会社は見事に立ち直った。
(産経新聞、談話室「商道徳を教えてくれた社長」、河野武男、2007/7/8、p.11)

この記事を読んで、何年か前に冒頭の疑問を融資元のりそな銀行の支店長にぶつけた時のことを思い出した。

「メーカー系の通販会社は、私たちの製品サービスを必ず正当に評価していただけますが、流通系の通販会社はまったく駄目です。彼らは買い叩くことしか考えていません」
「当たり前です。彼らはそれが仕事です」

ほどなくしてりそな銀行が国有化され、さもありなんと妙に納得したのであります。

私たちのASPサービスの意味についてはモデル指向はなぜ必要か(2)に詳しく述べていますので、繰り返しません。

今は若者の「やりがい」のお話です。

新社長が河野さんに教えた商道徳とは、何か。

それは、前回のビジネスの現場と言う「劇場」でそれぞれの役者たちが演じる役柄を説明する「シナリオ」こそ商道徳そのものなのです。

わからん。そう、わからんのです。分かり難いからこそ、本質として重要なのです。

今の組織の中の若者の不幸は、この「シナリオ」の不在です。

今の組織の人たちは、みな「方法」は語るけれど、決してその「意味」を語らないし、語れない。語る自信も持ち合わせていない。

今の組織は一見目的を持って動いているように見えます。利潤の追求です。

しかし利潤は、結果でしかありません。

つまり組織には、利潤と言う価値観以外にもっと本質的な価値観が必要であり、これを若者に示すことができれば、そんな難しく考えなくても若者は組織の中で「やりがい」を持つことが可能になります。

この本質的な価値観が、その企業自身が果たすべき社会への貢献であり、今の若者たちはこの今の企業のウソ八百の社会貢献を、学生時代からインターネットを通してとっくに見抜いているのです。

第三レベルにあるかのような立派なことを言うソフトウェア業界の人月と言う派遣体質もその一つです。年金問題の元凶NTTデータの開発費が1兆円とはお笑い種です。

世の中のほとんどの組織が、この「シナリオ」不在です。この不在による不祥事の嵐は止むことはありません。

若者よ、こんな「シナリオ」のない企業で働かんでよろしい。

ちゃんと自分の目で自分の手でしっかりとこの「シナリオ」、商道徳と言う、心の通った企業に出会うまで、ちゃんと働かんでよろしい。

若者がうまく働けないのかとは、つまりそう言うことでよろしいのです。 KAI