老舗企業の秘密、それは教育しかないと思う

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あっと言う間に帰りの飛行機の中です。今回の旅は、とにかく眠い。眠いにもかかわらず、眠れない。と言うわけで機内に持ち込んだ本がよく読める。

帰りは、千年、働いてきました−−老舗企業大国ニッポン(角川書店、新書、野村 進、2006/11)。創業は西暦578年、飛鳥時代。以来実に1428年と言う世界一の社歴を持つ大阪の建設会社「金剛組」を筆頭に、日本には、創業百年以上の会社が1万5千社以上、これに個人商店など加えると10万以上あると言う。これが世界の中で日本だけに見られる現象と言う。

その「わけ」を求めて本書に登場する19社を含めて21社への取材から、筆者は日本の「老舗製造業五つの共通項」を次のようにまとめています。(p.211-213から抜粋)

第一 同族経営が多いものの、血族に固執していない

第二 時代の変化にしなやかに対応してきた

第三 時代に対応した製品とともに、創業以来の家業を守り抜く

第四 それぞれの“分”をわきまえている

第五 「町人の正義」を実践してきた

そして「山梨県甲府市にある吉字屋(きちじや)という創業約四百四十年の四十代の若き当主・高野総一社長」の言葉。(p.215)

「僕自身、後継というのは、一種の文化のような感じすら持っています。跡継ぎなんてことは言わなくても、三世代、あるいは多世代同居をして、祖父母や両親、叔父や叔母たちの姿を見て育つと、不自然な形ではなく、後継になってゆくという文化がある。老舗は、そういう文化としての機能を果たしてきたんじゃないかと、最近思うようになりました」

人は人一人で生きているのではなく、何十億年と言う生き物の命の大きさから、いま生活をともにする家族の大きさまで、意味のある繋がりの中で互いが支えあって生きています。企業も、働くことを通して、人と人が繋がり、この横のつながりだけでなく、これが縦のつながりとして、企業文化と言うものが人から人へ受け継がれていきます。

こう考えるといかに企業において、人を育てることが大事なことであるか、よくわかります。しかしこれはよく考えると実は、人を育てることの重要性はむしろ家族の中にこそあるのではないか。

先の高野社長の言葉は、老舗企業の話であると同時に、この老舗企業を支える「家族」の中に自然と受け継がれている家庭教育の仕掛けでもあると考えられます。

新会社ともども、このことを肝に銘じて飛行機を後にしました。 KAI