物理学の未来

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面白い。実に面白い。生命の法則が、物理の法則の単なる応用などではなく、生命法則こそ物理法則の基本の中の最も基本の法則であったとは、と言うことでしょうか。

物理学の未来(日経BP社、ロバート・B・ラフリン、2006/7/27)を読み始めたら止まりません。

私は持論として、我々は自然界における確実な因果関係をもとに、自分自身に関して何かを知ることができ、その因果関係の信頼性は、ミクロな規則ではなく組織化の原理に拠っていると考えていた。言い換えれば、我々が関心を持つ自然法則は、集団的自己組織化によって現れるのであって、その際にその構成部分を理解して利用するための知識は必要ないということだ。(はしがき、p.12-13)

著者ラフリンの主張のポイントはすべて、この一文に凝縮されています。彼は1950年生まれ、スタンフォード大学の理論物理学者です。1998年にノーベル物理学賞を受賞しますが、一貫して還元主義の限界を主張し、KAIも感動して読んだグリーンの『エレガントな宇宙』で展開されるひも理論に関する議論に対しても、“美しくはあるがどんな実験結果も予測できないような世界モデルを作ることが、いかに無意味であるか”と批判的です。

 私の主張を正当化するには、いくつかの衝撃的な考え方について率直に議論しなければならない。その考え方とは、「真空は「物質」である」、「相対論は基本的でないかもしれない」、「計算可能性は集団的性質を持つ」、「理論的知識には認識論的な限界がある」、「同様の限界が実験による証明にも存在する」、そして「現代物理学の重要部分は神話的性質を帯びている」というものだ。(はしがき、p.18)

この6つのテーマは、そのまま、いままでKAIが抱いてきた物理学に対する疑問であり、それが本書でひとつひとつベールを脱ごうとしています。ワクワクドキドキしながら頁を繰る楽しみは、たまりません。 KAI