きつねとたぬきと深い技術と早い技術

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大阪で「きつね」と言えば「あげ・うどん」であり、「たぬき」と言えば「あげ・そば」です。それじゃあ「天かす・うどん」はと言うとそのまま「天かす」うどんで、「天かす・そば」は「天かす」そばで、となります。

これが東京では「きつね」は「あげ」の意味で、「たぬき」は「天かす」の意味になりますから、「あげ・うどん」は「きつね」うどん、「あげ・そば」は「きつね」そば、「天かす・うどん」は「たぬき」うどん、「天かす・そば」が「たぬき」そばになります。

え?ややこしいって?そうです、ややこしいんです。

CNETの梅田さんのインタビュー記事「ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化」を読みながら、思わずこのきつねとたぬきの話を思い出してしまいました。

 技術という意味では、これは僕の造語なのですが、「深い技術」と「早い技術」というのがあると思っています。今のウェブの世界は「早い技術」--サービスを開発したら、いろんなものを組み合わせて、さらにそれをいち早くサービスとして立ち上げて、ユーザーをどんどん集めて改良していくなんですね。「早い技術」というのが正しい言葉かどうか分からないけど、僕はそう定義しているんです。

 「深い技術」というのは、やはり1つのテーマで、例えばGoogleはページランクというアルゴリズムがベースにあって、そのページランクというアルゴリズムで全世界のウェブサイトをランクづけして、といったものです。その検索の結果をとにかく常に改良していくといったものは、そう簡単にできる技術じゃなくて「深い技術」ですよ。アルゴリズムも相当深いです。そこに数学者やらPhDやら集めてきて何かやるというのはさらに上を行っているわけです。

この話を日本のネット企業やここCNETのおおくの読者にしても、よく理解できないと思います。現にインタビューワーであるこの記事の記者も、

--おっしゃっている技術志向の経営は、実を言うと日本から少しずつ消え去っていっているのではないかという気がします。

と、「深い技術」を「技術志向」と読み替えていますが、意味が全然違います。

まさに大阪の人間が、東京で「たぬき」と言って注文したら、うどんかそばか聞かれてそばにきまっとるやんけーと答えたら、出てきたのが「天かす・そば」だったと言う泣くに泣けない話と一緒です。

きつねとたぬきを今回の議論に当てはめれば、ビジネスにはあげと天かすがあって、技術にはうどんとそばがあるとすると、梅田さんの「深い技術」は大阪で言う「きつね」です。「早い技術」が「たぬき」です。

えー?ますますわからん?

そうです。この話はわからないのです。彼が議論しているのは、技術と言う言葉を使って、経営そのものを議論しようとしているからです。

人が知らない人の好き嫌いを議論できないのと一緒で、経営を知らない人には、技術は技術であって経営ではありません。技術が技術である人からすれば、深い技術は深い技術であって深い経営にはなりえません。

こう言う最高に美味しい「きつね」をお客様にお出しできるお店であり職人であり仲居であり経営者であれと言うのが、梅田さんのメッセージと解釈しました。いかがでしょう>梅田さん KAI