本社と言う建屋こそ人の心を組むことができる

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塔組みは木組み

久し振りに良い記事が、昨日配達された日経ビジネス(2005.9.26号)にありました。それも二つも。

旧国鉄のオンライン予約システムの開発責任者であった元鉄道総研理事長尾関雅則さんの言葉(p.1)。

「システム・インテグレーション(システム開発)はヒューマン・インテグレーション」。

この言葉を読んで、宮大工棟梁西岡常一氏の言葉を思い出しました。

塔組みは木組み。木組みは木のくせ組み。木のくせ組むには、人を組め。人を組むには、人の心を組め。

五重塔を支える一本一本の木にはくせがある。何年も経てば反り返る木を見極めるのは人間にしかできない。そう言う木を組み上げる職人を育て上げることは、職人自体の心を組み上げることである、と言うことです。

この言葉に、筆者が若干30そこらで100名以上の部隊を指揮しているときに出会いました。当時はまだ意味が十分理解できないまま、しかし、これをメンバーの心を「くみ取る」と理解して実践に適用しようと努力してきました。いま改めて考えるとくみ取るのくむは「汲む」であって「組む」ではありません。

いま、初めて、この意味の違いの重大さに気付きました。

本社が遷ろうユニクロの悲劇

もう一つの日経ビジネスの記事、と言うより写真(p.32-33)です。山口のファーストリテイリング本社の遠景写真です。それは地方私立大学のキャンパスの風景そのものです。なんとここに柳井正会長兼社長は年1回しか訪れないそうです。

これを見て、またまた思い出したのが、つい先週訪れたレッドモンドのマイクロソフトのオフィスです。レッドモンドの広大な森の中に点在する数十のビル。ビルと言っても大半が平屋に近い二階建て。その一つビルディング・エイトの前に立ちながら、このビルの2階の一室にいるビルゲイツのエネルギー波を感じたばかりです。まさにここは、キャンパス。池のまわりで一人ハンバーガーをむさぼる若者、と言うか、若者以外このキャンパスにはいません。しかし彼らはすべてマイクロソフトのタスクフォースの一員です。

ひるがえってユニクロ。官僚化する組織を柳井さんがなげきます。その通り、筆者が以前本社のあった渋谷のマークシティで目撃した彼らは官僚そのものでした。なんで一介のフリース売りが、こんな高層ビルでえらそうにするの。筆者はこう思いながらそうそうに退散しました。

心はその器に宿る

巨大帝国化しても一向に官僚化の声を聞かないマイクロソフトと、ユニクロの違いを、筆者は、この両者の本社ビルのありようの違いにその本質を見ました。

冒頭の人の心を組む、とは、随分前に取り上げた規律の文化と同義であることに、今、やっと気付いたしだいです。本社の建屋とは、何も言わなくても社員に規律の文化を伝える、そう言う建屋であれ、と教えているのだと。 KAI