定額制モデルはP=「機能単価」、従量制モデルはP=「情報単価」と言う仮説
続きです。M=「機能」の意味をもう少し考えてみましょう。
今回のASPサービスでは、PQ=Mですので、そのままPQ=M=「機能」、つまりP=「機能」/Q=「機能単価」が成り立ちます。これを、もう一度、レンタカーの例に戻って考えてみます。分かりやすいようにマンスリー契約のレンタカーを例にします。以前のエントリーで、レンタカーの目的は、車の持つ機能(移動、運送、旅行)の販売にあると申し上げました。この機能の販売とはどう言うことかと言うと、例えば移動機能について、その機能を使用した量に対応する移動距離は、(1ヶ月どれだけ走ろうが)そのレンタル料金に関係せず、単に契約する車種の違いのみが単価に反映されていることが、すぐ分かります。
つまりは、機能単価とは、その機能を利用する量の単価ではなく、車種と言うその機能の性能(パフォーマンス)の単価であることを意味しています。マンションの家賃と言うものも、高級マンションの高級と言う言葉はマンションの居住(機能)性能(パフォーマンス)を表す言葉であることを考えると、納得の行く概念と言えます。
ここで、以前取り上げた楽天の定額制から従量制へのビジネスモデルの転換の話しを思い出してください。定額制モデルの時の楽天が、ECサイトのモール機能のパフォーマンスに値段を付けていたとすると、従量制モデルでは一体この、機能単価の意味とは、何なんでしょうか。
これを考えるために、以前のエントリーで話題にした、はてなやSNSのビジネスモデルをここで改めて取り上げることにします。さっそく式で書くと次のようになります。
<はてな:ビジネスモデル>:
P=0.05[円/件]
Q=400,000,000[件];
<mixi:ビジネスモデル>:
P=0.02[円/件]
Q=500,000,000[件];
このモデルではP(売上単価)が小数点になっていて、しかも消費者から企業に直接支払われるわけではなく、実際は、消費者からスポンサーに何らかの代金として支払ったお金の一部が、スポンサー側で集約され、最終的に企業側に支払われると言う流れになっています。これを、単価が小数点であることがそもそもの本質で、広告と言うビジネスモデルが、この小数点の単価をスポンサーによって整数化(量子化)するビジネスモデルであると解釈することもできます(KAI式広告論)。
ここで取引されているのは、「件」と言う単位を持つ情報量です。Googleを利用するのも同じです。Googleの機能を利用して引き出すのは「情報」です。但しここには、上記のような情報を「取引」している感覚は存在しません。この感覚は一般消費者から考えるともっともな感覚です。しかし、本質は「取引」です。単価があまりにも小さいために消費者が気づかないだけで、情報当たりごく僅かな金額を「取引」しています。筆者も、過去に何度かGoogleで検索した本を、Amazon経由で買っていますが、このうちいくつかはGoogle〜Amazonと言う情報の流れを逆にたどって情報単価が流れている可能性があります。
この情報単価が、検索機能によって生み出されていることは、自明です。つまり情報単価の取引とは、機能のパフォーマンスではなく、機能により生み出される情報実体(インスタンス)そのものを取引の対象とするモデルです。このモデルでは、情報単価と言うように、情報量に従う従量制モデルになります。
それでは楽天の従量制モデルは、何の情報の従量制か。それはECサイト(モール)機能により集めた注文情報こそ、情報の実体です。これを金額で評価することで、従量制モデルが出来上がると言う構造です。
PQのリアリティを社員が理解しやりがいを持てばすべてOK
自分がお客様に何を買っていただいているか、何を売っているか、理解できていない社員は、不幸です。
自分たちのサービス、すなわち、お客様によろこんでいただく機能が、具体的になんであるか、これを理解した社員は、自分の実力以上のチカラを発揮します。
筆者は永いことソフトウェアビジネスにたずさわってきましたが、この真理こそが、すべてです。ぜひ経営者の皆さん、これを読んだ今の今から、社内の見積もりから「人月」と言う文言を、ただちになくしてください。お願いします。 KAI
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