モデル指向のような抽象的思考が難しいのは、当人にとって、モデルと言う抽象化の意味が理解できていないからではなく、抽象化を保証する具象性(リアリティ)を持ち合わせていないからです。抽象化の意味は、このリアリティの先にあります。
うちのカミさんに、会社の仕事を手伝わせようと思って、いくら経理の仕訳ルールを説明しても理解できないのは、仕訳の意味が理解できていないからではなく(もちろん理解もできていませんが)、仕訳の結果が、本人にとって何の利益(リアリティ)ももたらさないからです。javaと言うコンピュータ(抽象)言語を理解するとはどう言うことかと言えば、javaと言う言語の文法の知識があることではなく、具体的にどう言うソースを書き、どう言う操作をすれば、どう言う結果が得られるかを知っているかどうかです。
モデルが、当人にとって、この具体性と言うリアリティを持つようになると、このモデルを道具として使いこなせるようになります。あたかも小説家が、小説という手法(モデル)で、映画監督が、映画という手法(モデル)で、自分の考え(アイデア)を表現(実現)するがごとくです。
結論を先に書いておくと、人が、何事かを成し遂げ、目に見える結果を得ようとする時、モデルと言う道具が不可欠であり、このモデルの選択(創造)こそ、結果の成否を左右することになります。
道具として使いこなせないモデルは、モデルではありません。
会社の経営者が、経営のためにどのようなモデルを持ち合わせているかは、その企業の業績に激しく影響を与えます。カネボウの粉飾決算で逮捕された元経営者は、営業畑出身で、やり手の営業マンだったそうです。この彼は、業績を改善するには売上を上げることであると言うモデルしか、持ち合わせていなかったようです。その結果見かけの売上と言う粉飾に走る訳です。日産のゴーンは、コストカッターと異名を取るほどの、コストモデルを持つ名経営者です。
前々々回のソフトウェア業界の経営モデルの説明に使用した数式(モデル)を再度引用するとこうなります。
PQ=VQ+F+G
M=F+G
PQ=VQ+M
Q(損益分岐点)=F/(P−V)
(P:売上単価、Q:売上数量、V:変動費単価、PQ:売上、VQ:変動費、M:付加価値、F:固定費、G:利益)
この数式(モデル)によれば売上は、PQと表現されますから、売上を上げる(↑)ためには、P↑あるいはQ↑しかありません。もしこのP(売上単価)を人月単価と考えるなら、売り物である人月単価をアップさせるか、人月(Q)と言う頭数そのものを増やすと言う意味になります。もっと具体的に言えば、人月単価とは優秀なSEでありプログラマの確保です。当然優秀な社員は限られていますし、そもそも社員の人月(社員数)の上限は決まっていますので、派遣会社から派遣を受け入れることになります。かくしてV(変動費単価)も人月単価と言う構造が、出来上がります。
こんなモデルのどこをいじっても、私たちの考えるASPサービスのモデルは出てきません。どこがおかしいのでしょうか。
家賃収入と言うビジネスモデルの意味
ASPサービスは家賃収入であると、以前のエントリーで申し上げました。ソフトウェア業界における家賃収入とはいったいどう言うことを言っているのでしょうか。ASPサービスのQは、「台月」であると言うことは同様に以前のエントリーで説明しています。そもそも家賃収入ってなんなのか。次回以降に続きを説明します。 KAI
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