人月単価解体、良い言葉ですねえ^^;
前回の数式を再掲して、話を続けます。
PQ=VQ+F+G
M=F+G
PQ=VQ+M
Q(損益分岐点)=F/(P−V)
(P:売上単価、Q:売上数量、V:変動費単価、PQ:売上、VQ:変動費、M:付加価値、F:固定費、G:利益)
この売上の数量単位が人月ではダメだと言うことは、では、替わりは何になるのか。これを示さない限り、解体戦略なんてものは、そう簡単に描くことはできません。
今回もシリーズ化しそうな雰囲気ですが、とりあえずここではこの人月単価解体戦略について書きます。
と言うことで、まず筆者の体験から。会社設立当初から、概算見積の段階からオブジェクトフロー図を書くことで、この図の中のオブジェクトの件数(フローも件数に含みます)をカウントし、1件あたりの単価を見積もってきました。当初の単価は、確か3万円だったと思います。これで2年ほどやって、どうも経営が苦しいと言うことで、4万5千円に値上げをしました。更に、既存のシステムに機能を追加する場合は、別単価の6万円にしました。これが当たって、以降開発する案件では、間違いなく利益が出るようになりました。
その後、パッケージ製品を開発して販売を始めましたが、こちらの単価は1本いくらと、明解なものです。しかも私たちは一切カスタマイズしませんので、オプション製品以外追加費用がかかりません。もちろんオプション製品も1本いくらと言う単価をつけてあります。つまり見積単価は、1本あたりの単価のみでやってこれたと言うことです。
更に大きな変化が訪れたのが、4年前の2001年。開発したERPパッケージ製品をインターネット経由でブラウザで利用できるようにした、ASPサービスをスタートさせました。このASPサービスの料金体系の基本は、月額利用料制です。つまりQの単位が台月となって、家賃収入のように、使い続けてもらう限り毎月PQ(売上)があがる仕掛けです。
これは受託開発のように、納品してまとまってどかんと売り上げがあがるのではなく、入会契約した月から、毎月定額が振り込まれる仕掛けですから、契約者さえ確保できれば、経営的に非常に安定します。(人月派遣が安定するのもこれが理由ですが、内容はまったく異なることは自明でしょう)
また、これはパッケージ販売におけるメンテナンス料金とも、まったく考え方が異なるものです。実際に何度か経験しましたが、問題が起きていないとして、メンテナンス料金を支払ってくれないお客様も何社かありました。これに対してASPサービスでは、月額利用料が万一支払われなければ、IDを利用停止にすればいいだけです。
現在、私たちのASPサービスは、月額利用料だけでやっていけるようになりました。あとは会員が増えるだけ設備を増強し、サポートを強化するだけで、つまりF(固定費)を計画的に増やすだけで、VQ(変動費)はゼロですから、会員数が増えた分のPQ(売上)が、まるまるG(利益)として残る計算になります。
常にエンドユーザーを相手に仕事する
もう一つ、私たちがとってきた重要な戦略があります。それはエンドユーザー相手の仕事しかやらない、と言うものです。つまり下請けの仕事はやらない。これはなかなか厳しい決断でしたが、これで何度かメーカーやSIerからの話をお断りしてきました。
しかしこれで営業力をつけることができました。現在取引しているASPサービスの会員は、すべて直契約です。もしメーカーなどの代理店の営業を当てにしていたら、今、こうはなっていません。
さて、筆者の体験ばかりで、戦略論になっていませんが、ポイントは二つです。
■アプリケーションの月額利用料制のサービスに変える。
■エンドユーザーと契約する。
これをすぐに実行することが難しければ、逆に考えれば良いと思います。つまり、自社が開発した(開発する)アプリケーションの中に、月額利用料制に変更できるものがないかどうか。下請けでやっているものでも、エンドユーザーと直契約に切り替えられるものがないかどうか。一つでもこの可能性があれば、これをやってみるべきです。そして、これに全力で取り組んでいくことです。集中して全力で努力する中に活路は必ず拓けると、筆者は確信しています。 KAI
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