オープンの意味(3)−−−ビジネスモデルとの関係

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前回のエントリーで、次のような3種類のオープン化の事例をあげました。

インターフェイスのオープン化
データ構造のオープン化
無料化と言うオープン化

今回は、この三番目の事例の続きです。

一見jigブラウザの戦略は、アドビのPDF戦略と似ています。

アドビのビジネスモデルを再掲します。

<アドビ:ビジネスモデル>:
<アドビ:1>   /====><<ユーザー:1>>
<<ユーザー:2>>|−−−−><アドビ:2>
<アドビ:2>   /−−−−><<ユーザー:3>>
<<ユーザー:4>>|・・・・><アドビ:4>
<アドビ:4>   /====><<ユーザー:5>>;

この2行目と3行目のルールによる情報の流通は、「十分」な量の流通が確保されていることは明かです。ここで注意しておく必要があるのは、無償版と有償版の間には機能制限があるけれどこの情報の流通量を制限することのない「機能制限」であると言うことです。

これに対して、jigブラウザは『フルブラウザは無料の時代に--「jigブラウザFREE」公開』によれば、

 ただし無料版のため、いくつかの機能に制限がある。まず閲覧ページ数は1日10ページまで、ブックマークの登録数は10個までとなっており、アプリを起動させた時に一番最初に表示される「ホームページ」をユーザーが自由に設定することはできない。また、jigブラウザではアクセスしたいサイトのURLをメニューバーから入力することができたが、jigブラウザFREEではホームページからしかできない。さらにjigブラウザではメニューに地図検索や乗り換え検索などの機能があったが、jigブラウザFREEではこれらの機能はなくなっている。

と言う制限付きです。この機能制限は、アドビの機能制限と違って明らかに情報流通を阻害します。このビジネスモデルが、インターフェイスのオープン化戦略と言う問題構造と同じであると仮定すると、情報の流通量が十分に確保されない無料化では何の効果も生まないと言うのは簡単に想像できます。

これに対して他社はどうか。実は他社のビジネスモデルは、まったく構造が違います。他社は、アドビのような有償製品で収益を上げるのではなく、はてなやGoogleの収益構造と同じように、情報(広告や通信費など)の対価としてスポンサーから収益をあげる仕組みです。

この場合の情報量は、市場で流通する情報量と同程度あるいは上回っていることが条件になります。この意味でフルブラウザ市場と言うものがあるかどうかは別にして、機能制限付きのフルブラウザがこの市場でまったく競争力を持たないと言うのは目に見えています。

ではどうすればいいか。

これにはアドビの戦略をまねればいいと思います。つまり、この機能制限を見直し、アクロバットリーダーと同じように、「見る」機能は有償版と同等にし、「書く(設定を含む)」機能を一部制限します。今後の機能拡張はこれを徹底し、併せて書く機能の充実に努めるのは言うまでもありません。

もう一つは、収益構造すなわちビジネスモデルの修正です。競合する他社がすべて無料化戦略をとる中で果たしてこのままのビジネスモデルが通用するか疑問です。幸い、フルブラウザの技術があるわけですから、一般消費者向けとビジネス向けにセグメント化して、ビジネス向けのライセンスと言う情報の対価による収益構造と言うものも考えられます。

結果は半年もすれば出ます。どうなっているか楽しみ(?!)に待つことにします。 KAI