ソフトセクターとは(その4)

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ソフトセクターの競争戦略(2)

今までの議論は、B2B(2B,2C)を暗黙の前提にしていました。しかもB2Bの中のマッサージ型はあえて除外して議論しています。もともとマッサージ型自体には競争力はないと考えていますが、ソフトウェアエンジニアリングの進化次第では競争力を持つ可能性は十分あります。

残るは、B2Cにおけるソフトセクターの競争力とは何か、競争戦略はいかにあるべきか、ですがこれは次回以降に譲ることにして、今回は前回までで検討が不十分な部分の補足です。

これに対するヒントが、先のインタビューの中の「特に業界のバーティカルな問題を解決するようなソフト」です。私の記述で行けば、マス化した「業務」ではなく全ての「業務」範囲の中の特化・個別化した「業務」機能をカバーするASPです。

この業務に特化する話しは、大昔からどこでも言われてきて別に珍しくも何ともない話しであるにもかかわらず、なぜいまだに実現できていないのか、これが問題なわけです。

今回はあらためてこの問題を考えてみたいと思います。

まず、業務ノウハウと一言で言いますが、この業務ノウハウとは一体何を指しているのでしょうか。話しを単純化するために業務ノウハウを以下のように定義します。

■業務ノウハウとは、儲ける仕組みと、それを実現するための仕掛けおよび知識を指す。

まず儲ける仕組みとは、企業がモノやサービスの売買を通して利益を上げるためのビジネスのやり方です。これは更に、B2B、B2Cのいずれであるのか、販売するのはモノであるのかサービスであるのか、モノであればどう言った種類のモノであるのかなど、業態、業界などに細分化されていき、それぞれの中でのビジネスのやり方があると考えるのが普通です。しかも同じ業界の中では概ね同じようなビジネスのやり方をしている(はず?)と考えます。その前提で、実現する仕掛けも、業態、業界毎に共通した仕掛けを適用できると考えるわけです。

この考え方に基づいて、業務に特化する方向性が出てくるわけですが、しかし、果たしてそれは本当でしょうか。これについて先の「持たずに押さえる:ハイテク/インターネットセクターの競争戦略試論」の中で渡辺聡さんが紹介しているハーバード・ビジネス・レビュー(ダイヤモンド社、9(2004)、p.49)の中のソニーの森本博行氏の論文が参考になります。

 しかし、利益を左右するキー・サクセス・ドライバーは、業界構造か、経営資源かのいずれかを問う二元論的に判別できるものではない。むしろ、双方がプラスに影響し合った結果であると考えれば、より複雑にからみ合っているはずである。
 たとえば、最近デルが参入したプリンター業界では、HP、キャノン、リコー、エプソン、レックスマーク、ブラザーなど、多数の企業がしのぎを削っているにもかかわらず、いずれも収益性は高い。しかもPCとのインターフェースは標準化されており、プリンター・エンジン部の入手も比較的容易なため、参入障壁によって守られた業界ではない。
 実際、利益を製品本体よりもむしろ企業間での互換性に乏しいトナー・カートリッジに依存している企業もあれば、部品の内製化によって収益性を向上させている企業、印字精度という技術力の向上にフォーカスしている企業、あるいはエンジン部を外部に依存することで開発費を節約して収益性を維持している企業など、キー・サクセス・ドライバーはまちまちである。
 したがって、業界構造、自社の経営資源や事業構造をどのようにとらえるかによって、キー・サクセス・ドライバーも変わってくる。

この論文は高収益企業の利益モデルがどうなっているかがテーマですが、この利益モデルとはそのまま今私が問題にしている業務ノウハウとしてのビジネスモデルになります。森本氏が指摘しているように、たとえ同じプリンターと言う製品のベンダー同士でさえ、その収益モデルはまったく別物です。

実はこれが最初の問題認識「業務に特化するも、うまくいかない」の原因であり、今回のソフトセクターの競争力についての強力なヒントになります。

KAIモデル

これから先は実際私たちの会社のノウハウそのもので、どううまく説明するか正直悩むのですが、このKAIモデルで説明すればすべて解決できます。

次回はこのKAIモデルを使ってソフトセクターの競争力について議論したいと思います。 KAI