サーチエンジンは21世紀の文化の担い手(その5)

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サーチエンジンの大航海時代の幕開け?!

久しぶりに長い連載になりました。

前回のエントリーで、

それは、「テキスト・コンテンツに関わる人々」と言うのは新聞における「記者」の役割を担いつつあるのではないかと言うことです。どちらもアナログ情報とデジタル情報の狭間にいる存在です。これを「記者」と表現してしまうとある意味で範囲が限られてきますが、新聞の中のカテゴリーを飛び越えて、もっと世の中の学術情報をも含めた広い範囲のカテゴリーの中の一般化した「記者」の存在として認めるならば、サーチエンジンと言うマスメディアはこの「記者」の存在を獲得することによってアナログ情報さえも対象にすることが可能になると言えるのではないか。

と述べましたが、この一般化した「記者」を仮にOSJL(Open-source Journalist)と名付けることにします。この呼び方は、一般化した「記者」の存在が、梅田さんのBlogの以前のエントリー「オープンソース的コラボレーションが社会を変える」や、「製薬分野でのオープンソース的取り組み」の内容に通ずる部分があるからです。

世界中にいる、ありとあらゆるカテゴリーのOSJLが、次々とアナログ情報からデジタル情報を生産し続けます。それをサーチエンジンは、それぞれのカテゴリー毎の価値観でもって次々と編集していきます。この編集された情報は、世界中の、カテゴリー毎の情報を求めているユーザーの手元に、リアルタイムで届けられます。つまり、OSJLとサーチエンジンの組み合わせが、世の中のありとあらゆるアナログ情報をネット社会に流通させる道を拓く装置として機能し始めると言う考え方です。

サーチエンジン各社も、自社の特色を打ち出すシソーラスを全面に出して、OSJLと協調した開発競争を繰り広げることになります。

この仕掛けがそのまま、既存の紙媒体によるテキスト情報の流通と言う既得権益を所有するマスメディアと、まともに対峙するわけではないと言うのは簡単に分かります。

しかし、私はこのテーマの冒頭で取り上げた産経新聞の購読体験から、新聞と言うマスメディアの価値はすでに「紙」と言う物理的な媒体としての意味以上の価値を持ち得ていないと言う事実を考えざるを得ません。

すなわち我が家の産経新聞は、毎朝3時45分前後に配達されますが、午前2時前後から仕事をしている私は階下の郵便受けの、その配達された音を聞いて新聞を取りに行き、読み終わるのが4時過ぎです。私が新聞に目を通すのは10分少々と言うことになります。1面の産経抄と正論、あと、2、3の興味ある記事でお仕舞いです。これ以外はほとんど他の媒体かインターネットで既知の内容です。これは私の産経新聞の購読料は上記の記事(と休日のテレビ欄)に対する情報料と言うことになります。これらの情報は、有料のWebページを含めてすべてサーチエンジンに置き換え可能であり、新聞としての残るメリットは、黙っていても毎朝配達されると言うpush型であることとパソコンのスイッチを入れなくて済む紙媒体であることだけです。

つまり、パラダイムの転換が起きているかどうかの問題と言うより、当のパラダイム自体のいわゆる既存のマスメディアと言うものの位置づけが、ネット社会の中で大きくシフトし始めていると言った方がより適切です。更に言えば、「ネット社会の世界中のアナログ情報の海を帆走するサーチエンジンによる大航海時代の幕開け」と言う新しいパラダイムの誕生、と言うのは決して大袈裟な表現ではないと思います。 KAI