サーチエンジンは21世紀の文化の担い手(その2)

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昨日のエントリーの続きをやる前に、サーチエンジンに関連して、CNETのBlogに2日続いて興味深いエントリーが掲載されています。一つは、渡辺聡さんの「GoogleとYahoo!の価値創造における根本的な違い」で、もう一つは梅田さんの「検索できないコンテンツは存在していない?」です。

先に渡辺さんのエントリーを取り上げます。

一つ、Googleがどう対応するのか、注意深く追っている現象がある。Weblogの増殖に象徴されるトラフィックの分散化である。メディアや企業サイトよりも、Blogを情報源として重視しはじめているという声はあちこちから入る。ポータルやサーチが席巻していたウェブの入り口はBlogに浸食されつつある。どのような形態であれ、自社サイトへのトラフィックを集めるというここしばらくの競争原理は少し形を変えてきている。

別の話題を話していてアリエルネットワークの徳力さんから頂いた問いかけがこの問題を端的に示している。

1:コンテンツがこのまま増えたら、私たちはどうやって価値のあるコンテンツを見つけるのか。
2:メディアはこのままでいいのか?
3:ブログではディスカッションが機能していないのでは?

それぞれ簡単にコンセンサスをまとめると

1:サーチは有効なツールであるが、機能不全に陥りつつある。BlogがPageRankの邪魔をしつつあるという狭い意味ではなく、情報量の増大と合わせて起こったコンテンツの文脈の多様化により、リテラシーがこれまで以上に求められるようになっている。単純なランキングシステムでは、情報は得られても知識は得られず、飢えは続く。
2:メディアは消えはしないだろうが役割を変える。情報過多になると、一次情報よりも判断とフィルタリングの価値が相対的に増す。正しい情報を伝えているだけではもはやユーザーの要望は十分には満たせない。
3:米国はともかく、日本ではいまいち機能している感じを受けない。米国でも見ている範囲で十分に機能しているかは疑問である。ただただ数が増え、追うだけで疲れきってしまい飽き飽きしてしまっている。

(中略)

Googleの対応としては、AdSense、AdWordsを分散化させ、ウェブ上のあらゆるところに遍在させようと動いている。万能解ではないが、進もうとする方向は分かる。分散するものには分散出来るものを提供すれば良い。なんともシンプル。

しかし、根本問題である情報の氾濫は解かれていない。また、現行のサーチのアプローチでは解かれないだろうと考えている。何十年も経ち、技術がありえないくらい進化すれば別だが、アルゴリズムが少々良くなったところで限界が見える。「私たちは違う方向を目指すべきではないのか?」、最近耳にすることの増えた意見である。こういった大きな動きを彼らがどう認識し、どのような回答を用意しようとしているかはとても興味深い。

まず1:の問題ですが、昨日のエントリー「サーチエンジンは21世紀の文化の担い手」で書いた通り、情報量の問題はすでに問題自体にはなり得ません。編集機能が有効に機能している限り単に個人の情報処理能力の問題です。

2:のメディアの問題は、メディア自身がサーチエンジンとして参入しない限り、市場はGoogleを含む新興企業の独壇場となり、著作権と同等の編集権がサーチエンジンに奪われることになります。この指摘の意味を理解できるメディアの経営者であれば、経営的に打つべき手が見えるはずです。

3:ですが、Blogの本来の役割「逆方向のリンク機能」の意味を理解すべきです。世の常として、産み出した本人にはその意義は理解できません。この機能のサポートのおかげでGoogleが誤動作を始め、Googleの編集権に揺さぶりを与えられることは、ベンチャーにとって最大のチャンスであることをこれまた理解する必要があります。

梅田さんのBlogからの引用も同じ論理構造です。

「サーチエンジンによって見つけられないものは存在していないのと同じ」という危機感が、テキスト・コンテンツに関わる人々の間に醸成されつつある。今日ご紹介するいくつかの記事に共通するのはそんな感覚だ。

サーチエンジンが対象とするのはデジタル情報ですから、対象になるにはデジタル化する以外には方法がありません。しかしデジタル化したからと言って即取り上げられるわけではないと言うのは、全く新聞における記事の扱いと同じではありませんか。

ここで必要なのは、従来の新聞のような限られた新聞社による編集ではなく、本当の意味で学術的にも営業的にも可能性を持った開かれた編集者の価値観による編集です。世の中で認められるべき情報があれば、いつでもインターネットのボランティア機能を利用したデジタル化が可能と言うのはいつぞやの梅田さんのエントリーそのものです。 KAI