CEOは大変(続々)

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本日創刊の「日経ビズテック」に、『ビジョナリーカンパニー』著者のジム・コリンズが特別寄稿を寄せています。この中に、すばらしい記述がありますので、引用します。

 偉大な企業の勃興と没落を長い歴史の中で見ていくと、技術革新は偉大な企業の勢いを加速する要因にはなるが、偉大な企業への飛躍や偉大な企業の没落の主因になることはない。偉大な企業はまず、規律の文化を築く。規律ある人材を集め、規律ある考えを確立し、規律ある行動をとる。
 そして、自社が世界一になれる部分、経済的原動力になるもの、情熱をもって取り組めるものという三つの円が重なる部分においてビジネスモデルを構築する。技術はこの概念に基づく事業を強化するために用いるのであり、この概念に代わるものにはなりえない。

この『規律の文化を築く』と言うのは、CEOは大変(続き)の中で、

私が理解するのは、なかなかうまい表現ができませんが、あえて言えば「身体感覚」あるいは「リアリティ」とでも言えましょうか。

確実に企業運営に自信が持てるようになると、組織の隅々まで、神経が行き渡るようになります。テニスにおけるラケットであるとか、自転車を乗りこなせるようになった時の自転車であるとか、道具が皮膚感覚で使えるようになると、道具があたかも身体の一部であるかのように機能し始めます。企業という組織も、CEOの身体組織の一部として機能し始めた途端、CEOの意志に従って機能し始めるのです。

と書いたことと深く繋がっています。

更に引用を続けますが、この記述もCEOの「身体感覚」と関係しています。

 偉大な企業を築く仕事は、巨大で重い弾み車を回転させるようなものだ。初めはゆっくりと一回転させるだけでも大変な努力が必要になる。だが、そこで努力を止めることはない。
 常に同じ方向に押し続ける。二回転する。押し続ける。四回転、八回転、十六回転、三十二回転、六十四回転。勢いがつき、回転が速くなる。百回転、千回転。勢いが勢いを呼ぶようになり、百万回転、一千万回転と、回転が速まり勢いが強くなる。

(中略)

 それでは、巨大で重い弾み車を回転させ続け、偉大な企業へ飛躍するためのカギは何であろうか。少し前に幾つかの米国大企業が不祥事を起こし、結果として倒産する事態を引き起こした。この反省から、企業統治の仕組みを見直す動きが出てきている。
 しかし、具体的にどのような企業統治の仕組みを採るのかよりも、誰が統治するのかの方がはるかに重要だ。この点を米国の議会と企業経営者は見落としている。決定的な問題は、取締役会の構造や経営者の報酬をどうすべきかではない。
 カギになる問題はこうだ。誰に経営責任を与えるべきなのか。誰を取締役に選任すべきか。誰が主要な委員会の主要な地位に就くべきなのか。決定的な教訓は、何よりもまず、主要な企業や機関のトップに適切な指導者、私が『ビジョナリーカンパニー2』で指摘した「第五水準の指導者」が必要だという点である。

(中略)

 しかし有能な経営者が真のリーダーシップを発揮するには、第一水準から第四水準までの能力を持つことに加え、もう一つ「特別な要素」を持った第五水準に到達しなければならない。特別な要素とは何か。個人としての謙虚さと、職業人としての意志の強さという矛盾した性格を組み合わせて持つことである。
 第五水準の指導者は控えめで追従を嫌うが、禁欲的なまでの決意によって、偉大な企業を築くために必要なことはすべて実行する姿勢を取る。野心は自分個人にではなく、偉大な企業の構築という大きな目標に向ける。我や欲を持っていないというわけではない。それどころか、信じ難いほど野心的である。だが、野心は何よりも企業や機関に向けられ、偉大な企業を築くことに向けられていて、自分自身には向けられていない。

この記事以外も非常に興味深い内容がありますので、ぜひ書店で買って読んで下さい。

CEOの「身体感覚」こそ、コリンズの言う「第五水準」の感覚です。企業にとってCEOが全てであり、CEOの意志、志(こころざし)次第で企業はどうにでもなります。フィオリーナやバレットも間違いなく「第五水準」に達したCEOです。

ここで冒頭の引用『規律の文化を築く』につながってきます。規律は言葉を生みます。その言葉が価値観を生み、価値観が行動を則す。この規律と言う仕掛けは、CEO自身の肉体を組織と「身体感覚」「皮膚感覚」レベルで一体化させます。

ここで初めて、CEOの志のすべてがいかんなく発揮され、偉大なる企業への階段を上り始めます。

正に、CEOは大変ですが、こんなやりがいのある職業は世界中他にありません。 KAI